●R.シュトラウス アルプス交響曲
 ルドルフ・ケンペ指揮
 シュターツカペレ・ドレスデン
 録音:1970年6月/1971年9月
 Seraphim TOCE-7146




 その昔、R.シュトラウスの「アルプス交響曲」は駄作、珍曲、キワモノ扱いされていてLP時代、主だった録音
はベーム,ケンペ,メータ程度だったが80年代に入るとドンドン録音が増えていった曲である。

 夜明けに始まって、登山開始!森に入って、滝を見て、花の咲いている草原、牧場を抜け、道に迷い、氷河を
越えて、ついに山頂に到着!しかし霧が立ち込めて雷雨にみまわれながら下山して、そして日が沈む、という
ストーリー(そんなお気軽なものでないとする珍説がある)。

 しかし、R.シュトラウスは「交響詩」でなく「交響曲」と名づけている!

 始めに登場する「山の主題」「日の出の主題」「登り道の主題」「岩場の主題」と4つの主題を軸に「提示→展開→
再現」する手法がとられ曲想も「序奏・速・緩・速・緩・後奏」といった交響曲的な構成要素も盛り込んでいるところ
に「交響曲」と名づけたR.シュトラウスの意図がうかがえる。

 録音はルドルフ・ケンペ指揮/シュターツカペレ・ドレスデンのEMI盤がすばらしい。なんといってもオーケストラ
が魅力的である。まず耳に届くのがパワフルな金管で特にホルンセッションは音の柱がそそり立つ感じで、うるさく
なる下品になる一歩手間で勝負している。
 それをガッシリと受け止めるのが弦楽群で、表現力もあり、力量感もあり、透明感もある。さらに木管の柔和で繊
細な表情が加わり、打楽器の一撃がトテツモナイ説得力をもって響いてくる。

 ルドルフ・ケンペのすばらしさはアルプス交響曲とオケの両方の魅力を引き出している点である。オケの魅力は
すでに述べたので繰り返さない。

 アルプス交響曲は前半の自然描写の巧みさに、ついつい耳が奪われてしまうが、後半以降(雷雨と嵐、下山は
除く)は自然描写でなく心理描写となっている。例えば「頂上にて」は「頂上だ!バンザーイ」の幸福感・達成感で
なくオーボエが悲しげなメロディーを謳うことに注目してもらいたい。

 そこに描かれているのは自然の雄大さに対比された人間の小ささであり、宗教的な境地を感じさせる自然賛美
の心理である。偉大なる先輩ベートーヴェンのパロディーである「雷雨と嵐、下山」を経て「日没」〜「夜」にかけて
は宗教的ともいえる敬虔な色合いが強くなっいる。

 ケンペは大自然の雄大さや宗教的な敬虔さもしっかり描き表現している。聴く者はしっかり味わって欲しい。


 04/08/23


 
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